ミュージカル「エリザベート」
帝国劇場
   脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ    音楽:シルヴェスター・リーヴァイ  翻訳:黒崎 勇、迫 光   音楽監督:甲斐正人  振付:大島早紀子、麻咲梨乃     装置:堀尾幸男    照明:勝柴次朗    衣裳:朝月真次郎     製作:岡本義次、坂本義和      演出・訳詞:小池修一郎  オリジナル・プロダクション:ウィーン劇場協会   制作協力:宝塚歌劇団     協賛:住友VISAカード          後援:オーストリア大使館     協力:ハウス食品、オーストリア航空            公演期間:2000年6月6日〜8月30日        料金:S-13,000 A-8,000 B-4,000  プログラム1,500    観劇日 2000.6.17 12:00〜 2F G46(A席)  2000.7.1 12:00〜 2F F24(A席)  出演:  エリザベート:一路真輝        トート:山口祐一郎(6/17)、内野聖陽(7/1)  フランツ・ヨーゼフ:鈴木綜馬        ルイジ・ルキーニ:高嶋政宏  皇太后ゾフィー:初風 諄          皇太子ルドルフ:井上芳雄           マックス公爵:寺泉 憲           ルドヴィカ:阿知波悟美  エルマー・バーチャニー:今 拓哉      少年ルドルフ:高橋 徹  グリュンネ伯爵:治田 敦        シュヴァルツェンヴェルグ公爵:塚田三喜夫  リヒテンシュタイン伯爵夫人:伊東弘美    ヴィンデッシュ:岡田 静  マダムヴォルフ:シルヴィア・グラブ     ヘレネ:小野佳寿子  ラウシャー大司教:松澤重雄  ケンペン男爵:石山毅  ヒューブナー男爵:砂川直人  ツェップス:森田浩平     シュテファン:藤本隆宏    ジュラ市長:野沢聡  スターレイ伯爵夫人:北林優香  マデレーネ:梅村陽子    死刑囚の母:井上めぐみ  青柳勝大郎、池田紳一、小原和彦、斎藤桐人、酒本朗、武内耕、水野栄治  大川美佳、河合篤子、栗原朗子、鈴木喬子、鈴樹葉子、長谷川美穂、平澤由美、  丸山知津子、尹嬉淑  トートダンサー:  清水隆伍、須田英幸、鴇田芳紀、縄田晋、NIRO、東山義久、藤浦功一、吉川哲  満を持しての登場。東宝のエリザベートである。  キャストはやはり四季系が多いのではっきり言ってそういう見方の楽しみ方がある。  ついこの前まで野獣やル・フウ、ルミエールをやっていた人が帝劇でこんなことをやって  いるなんて1年前は誰が想像しただろう。2幕のゾフィーを囲んでの少しコメディチック  なやりとり(皇帝に別の女を〜の場面)はなんか美女と野獣の召使いたちを見ているよう  な気分になり、また、一幕でフランツがヘレネでなくシシィを選ぶ場面では、フランツが  四季と宝塚出身者を前に選択を迫られる、といった感覚になるし、なによりもハムレット  とレアティーズ、フォーティンブラスがデンマークではなくウィーンで再会しているのも  興味深い。でも、総じてキャスト的には申しぶんないと思う。歌系の人、ダンス系の人、  人気のある俳優などを揃え、いかにも東宝的なキャスティングであった。私が特に気に  入ったキャストは山口トート、鈴木フランツ、初風ゾフィー、井上ルドルフである。  高嶋ルキーニも王様よりもかなりハマリ役になっており、6月の時は音がずれたところ  (計画どおりに〜のところ)があったが、7月にはちゃんと合っていた。2階席からだと  声の通りというか声質的に通らないように思えたが何よりも芸達者ぶりで小技がよく効い  ていたと思う。一路エリザベートは背が高いのか年齢的にか一幕の若き日があまり娘に  見えないというのがあり、声的にも調子が悪い?と思う節があった。是非トートの方で  見てみたい。鈴木フランツは若き日もなんか大げさにスキップ気味にかけよったりして  若っぽく見え、髭が増えていく(!)こともあってか、各年齢をきれいに演じ分けていた  感じである。歌も難しい曲揃いだと思うが安心して聞いていられた。井上ルドルフは2幕  のほんの十数分の出演であるが、存在感タップリで何よりも若さ爆発的な歌い方をして  いてしかも声質が良い。トートとのデュエットでは落ち着いて朗々としたトートとテン  ションが合わないように見えてしまうが、このままの若い歌い方を保って欲しいと思う。  さて、今回のダブルキャストの両トートであるが、完全に山口トートの圧勝である。確か  に内野トートの方が演技的に繊細で魅力的な仕種が結構トートらしさ(非人間的)な  アピールをしていたが、やはりこれはミュージカルであり、さらに曲がとても素晴らしく  そして難しいわけで、トートも当然歌わないといけない役であるから歌は重要なポイント  である。山口トートは冒頭から余裕ありありな歌い方で、「最後のダンス」のサビは突然  の大音量の大迫力でうれしくなった。まわりの観客も(多分、ミュージカル初心者で内野氏  はTV等で知っているが山口氏は知らない人々)「すごい。」等のざわめきがあり、  幕間にパンフでキャスト名を確認していた。  東宝版と宝塚版の比較はやはり男がいる分、迫力満点であり、リアルである。その代わり  華やかさはない。あと、大雑把になった気がする。演出的には新曲が増えたり、キッチュに  世界の美女が出て来なかったり、コルフ島で父の幻影に会ったり、男のトートダンサーが  いたりしたが、やはりあのトートダンサーが冒頭から異色であった。最後の人間彫像は  はっきり言って意表を突かれた。  今回は宝塚の「愛と死のロンド」というサブタイトルがなくなってよりウィーンのオリジ  ナルに近づいたというふれこみであるが、「愛と死の輪舞」も歌うし、エルマーがいるし、  今回だけの新曲が入ったりして果たして本当にオリジナルに近づいたのか? 演出家が  一緒ではちょっとバージョンが変わっただけであまり変化がない気がする。  とはいえ、東宝(グループ)の総力を結集したというのは過言ではないし、公演期間や  チケット販売状況的にレ・ミゼラブルとまでは行っていないが、今後再演していけば一般  の認知度も上がって東宝ミュージカルの中心になるのは必至だろう。   P.S 結局、さらにもう一度見に行った。                2000.7.15 12:00〜 2F H35(山口トート)
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