東宝創立70周年記念公演
パナマ・ハッティー
帝国劇場
 作曲・作詞:コール・ポーター   脚本:ハーバート・フィールズ、B.G.デ・シルヴァ  翻訳:新谷忠彦  訳詞:及川眠子   演出:吉川 徹  音楽監督・指揮:塩田明弘  編曲:上柴はじめ  歌唱指導:楊 淑美    振付:川崎悦子  タップ振付:藤井真梨子  装置:倉本政典  照明:塚本 悟  衣裳:有村 淳     協力:テレビ東京  公演期間:2002年3月3日(日)〜30日(土) 料金:S席¥12,500 A席¥8,000 B席¥4,000    キャスト:  ハッティー・マロニー :大地 真央  ヴィヴィアン・バド    :草刈 正雄  ニック・バレット   :今井 清隆  ウージー・ホーガン    :尾藤イサオ  スカット・ブリッグス :今  拓哉  ウィンディー・ディーガン :吉野 圭吾  リーラ・トゥリー   :堀内 敬子  フローリー     :シルビア・グラブ  ジェラルディーン   :小此木真里  ホイットニー・ランドルフ :林 アキラ  マック        :大森 輝順  マイク          :佐嶋 宣美  井上 仁司、岡 智、沼沢 勉、香取 新一、武内 耕、板垣 辰治、坂井 成、  原田 優一、外山 尚雄、荒木 由和、佐藤 隆  小笠原 みち子、千葉 桃子、森本 麻祐子、板倉 リサ、池谷 京子、斉藤 文華、  辻 奈緒子、長山 志津香、吉田 ひかる、白木原 忍、村瀬 美紀、林 久美子、  樋口 綾、武田 みゆき、高橋 志穂、横山 博子  観劇日:2002年3月6日(水)13:00〜  2F I列39番(B席) 1940年に初演された作品を、今年わざわざ大地真央主演で日本初演するというは、 懸命に大地真央に合った新作を探して来ました、とういう感じがアリアリの公演である。 しかも、同じコール・ポーター作曲の別のミュージカルから有名曲を2曲もこの作品に追加 したり、終了後にレビューショーを追加したり、衣裳の多さをウリにするなど、有名曲なし、 短い、古い、というオリジナル作品に苦し紛れの改造を加えての上演。。。。 いったいどうなるのか。 相手役がミュージカル界では実力者であるものの、一般にはあまり知名度がない今井清隆 を配役していることからもわかるが、やはり大地真央中心のミュージカルである。大地真央 は久しぶりに観たが、その期待に完璧に応えているところはあらためてさすがだと思う。 歌良し、演技良し、ダンスだって役にハマって客を引きつけることを忘れない。一生懸命 似合う作品も探したくもなる逸材である。また、一つ当たり役ができましたねー。 その相手役の今井清隆であるが、劇団四季でオペラ座の怪人をあれだけ好演していた割には ちょっともったいない役柄である。まず、朗々と聞かせる歌があるナンバーがない。 パンフレットの記載からもわかるが、一般には知名度がある草刈正雄が2番目に名前が出て くるという事もあり、本当にもったいない扱いを受けている。7月の「キス・ミー・ケイト」 もヒロインの相手役を今井清隆が演じるが、これは2000年のブロードウェイ・リバイバル でトニー賞主演男優賞(ブライアン・ストークス・ミッチェル)まで取った凄い役なので 是非、活躍して欲しい。でも、これも前宣伝では一路真輝に隠れた扱いを受けているよなー。 逆に赤坂 晃の方が今回の草刈正雄同様、扱いが高いし。 その草刈正雄は、名前が2番目に出ていて、あたかも大地真央の相手役、あるいはそこまで いかなくても横恋慕なりのなんらかのカラミがあるのかと思いきや、ただの端役で人の良い 執事のおじさんというのは、かなりおかしい。東宝の作品製作に対する傾向からすると、 もう驚きもしないが、あまりにオリジナル作品を無視した商業キャスティングはもうアキアキ。 本人は責任がないと思うし、スマートな執事・バド役を好演していたので相手役を喰わない 程度の端役として考えるなら草刈正雄ももったいない使われ方をしている。 リーラ役の堀内敬子も劇団四季で数々のヒロインを経験してきたにしてはもったいない役で ある。しかも、いわば悪役である。聞かせる歌もなし。から元気なキャラクターもイメージが 違ったが、「つまり、」という口グセを多用して早口にしゃべるところなんかは、うまい演技 をしていて、新たな側面を観た感じ。 林アキラ演じるホイットニー氏が花粉症というエピソードが効果的に使われているが、これは オリジナルもそういう内容なんだろうか。現在の日本にあって、まさにこの時期の上演という のは、この部分だけはまさにピッタリという感じがするのであるが・・・。 ジェラルディーン役は昼の部で本物の子役の小此木真里が演じていたが、以前にレ・ミゼラブル のリトル・コゼット等をやっていた頃や、NHKの「すずらん」に出ていた頃から比べると さすがに成長したな、と感心した。ハッティーとのカラミも一番多く、大物スター・大地真央 と対等に渡りあるいているうまさにびっくりした。将来は大物ミュージカル女優になって もらいたい。 コール・ポーターの曲はさすがに良い。無理矢理入れた2曲「ビギン・ザ・ビギン」(1935年 初演「ジュビリー」より)、「ナイト・アンド・デイ」(1932年初演「陽気な離婚」より)も 効果的な使われ方だと思うが、それがなくても充分に楽しめる曲があった。 7月に「キス・ミー・ケイト」も上演するし、コール・ポーターブームにしようとしている? ラストのレビューも宝塚を彷彿させようとしているのかもしれないが、そこまではなりきれて いないので中途半端である。ここでも他の役者はほとんど活躍しないので、完全に大地真央 オン・ステージ状態となっている。確かに時間的には本編が短いので、こういうオマケ的な ショーはうれしいし、なくても良いなどとは言わないが、質的にはちょっと時間稼ぎ的な感じ もした。 観客の入りもさすがに平日の昼間ということもあり空席もあったが、大地真央の当たり役作品 として何年かおきに再演してもいいのではないか。
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