レ・ミゼラブル
帝国劇場
    作  アラン・ブーブリル/クロード=ミッシェル・シェーンベルグ    原作 ヴィクトル・ユゴー   音楽 クロード=ミッシェル・シェーンベルグ    作詞 ハーバート・クレッツマー    編曲 ジョン・キャメロン    音響 アンドリュー・ブルース/オートグラフ    衣裳 アンドリュー・ネオフィトウ   照明 デイビッド・ハーシー    装置 ジョン・ネピア    潤色/演出    ジョン・ケアード/トレーバー・ナン          2003年 7月11日13時(初日) 7月23日13時                2F K列38番     2F J列27番     ジャン・バルジャン    今井清隆         別所哲也     ジャベール         燗政宏         岡幸二郎     エポニーヌ        ANZA         ANZA     ファンテーヌ       マルシア         高橋由美子     コゼット         河野由佳         河野由佳     マリウス         山本耕史         岡田浩暉     テナルディエ       三遊亭亜郎        駒田 一     テナルディエの妻     森公美子         峰さを理     アンジョルラス      坂元健児         吉野圭吾     ガブローシュ       吉武怜朗         吉武怜朗     リトル・コゼット     永嶌花音         川井七星     リトル・エポニーヌ    国分鈴可         塚田真依     グランテール       伊藤俊彦         伊藤俊彦     クールフェラック     横田大明         横田大明     ジョリ          坂口 勝         岡田雄一     コンブフェール      上條コウ         上條コウ     フイイ          篠原 功         篠原 功     レーグル         小林 仁         小林 仁     バベ           若泉 亮         若泉 亮     ブリジョン        岸 祐二         岸 祐二     プルベール        萬谷法英         萬谷法英     モンパルナス       KENTARO      KAZZ     クラクスー        清水拓藏         清水拓藏     買い入れ屋        浜崎真美         浜崎真美     マテロット        高島みほ         高島みほ     ファクトリーガール    高橋真記子        高橋真記子     ジベロット        宮菜穂子         宮菜穂子     マダム          荒木里佳         井上珠美     少年1          澤田祥子         澤田祥子     少年2          浦壁多恵         浦壁多恵     カツラ屋         亜久里夏代        古川恭子 今年の一大ニュースはやはり、新生レ・ミゼラブルなのであるが、まず、キャストが4人 ずつという、東宝のだんだんエスカレート気味のふっきれたようなすごい戦略に参った。 十年選手を引退させただけでなく、さらにここまでしなければ「新しい」というイメージ が目立たないほど日本では定着した演目であるため力の入れようもわかる。 ちなみに「新生」というのはキャストだけでなく、中身も変わっている。すでに終わって しまっているブロードウェイで1年ほど前に変更されていた「通称:BWバージョン」で ある。日本語歌詞でいうと昔あった「淫売も八百屋と同じさ・・・」とか「浮気がばれ たら殺される」とかお馴染みのセリフ(歌詞)が大量にカットされている。シーンの つなぎも、馬車のシーンとか酒場のリトル・コゼットの掃除シーンなど早く流れる大急ぎ バージョンである。上演時間で確かめても13:00-14:30 15:00-16:10(休憩30分)だから その通り。ブロードウェイでは俳優組合の残業代節約のために全体で3時間を切るように カットしたそうであるが、日本ではそんな制約もないのに何故採用したのか。そもそも、 ブロードウェイでは休憩時間も15分から12分という苦悩のカットして全体で3時間を 切る努力をしているのに、日本では本編はカット版をもってきても休憩時間は堂々30分 も取ってるままなのは何故なのだ。 さらにアンサンブルの役名変更がされている。クローンが〇〇屋になったり、ガミネット が少年になったのはわかり易いからいいとして、ジョリー→ジョリ、ブルジョン→ブリ ジョン、クラクス→クラクスー というのはなんの意図があって変えてるんだろう。 さて、全キャストは到底見るわけにも行かず、とりあえず注目キャスト中心に2公演を 観賞した。 [7月15日] 今回はプレビューというものがあったせいか、この日が本公演の初日とは行くまで気付か なかった。チケット買う時に気付かなかったとは自分でも驚いた。 今日の注目は今までジャベールをやってきた今井清隆のジャン・バルジャン就任である。 劇団四季で「オペラ座の怪人」などをやってかなりドラマチックな演技に磨きがかかって いて実力では当然東宝でも主役ができると注目している。感想は背格好はまさにイメージ 通りのバルジャン。 次に「ジキル&ハイド」で私も目を見張ったマルシア。案の上、東宝のメイン演目に登場。 しかし、ファンティーヌの一番のナンバー「夢やぶれて」はマイク付け忘れ? ナマ声で 曲を歌う。あまり聞こえず迫力もなし。死の場面では声が復活していた。このミスは許せ ないなー。 高嶋政宏はイメージ的にはジャベールぴったりだし、「エリザベート」では迫力のある男 を名演していたのでミスキャストではないと思うが、音は外してないが声質が合わない。 声量安定してないのかフレーズの頭だけ音が割れてるのが目立った。名曲ミュージカルは 合わないのかも。芸達者なのはいいのでやはりコメディとか狂言回し役でセリフで持って いく役が良い。しかし、自殺のあたりは調子が出て来ていた。上達が早いし長くやって いくのであれば楽しみではあるが。ファンティーヌ死後の対決はやはりジャベールが変で アンバランス。今井清隆が一人二役で対決やって欲しいところ。 ANZAエポニーヌ、透き通った声が幼系で良い感じ。しかし、セリフの母音が飛んで残念。 山本マリウス、もとガブローシュとは感慨深く、これも話題性充分のキャスティングだが あまり声がマリウスに合っていないような感じ。 坂元アンジョルラスはいい感じ。背が小さいのでリーダーとはどうかと心配したが、学生 っぽくて逆に良いのではないか。新しいイメージのアンジョルラスだ。歌ももちろん良い。 バリケード上で声を張り上げるのはプライドロック上のシンバを思い出す。高いところが 良く似合う。 河野コゼット、特に上手くもなく下手でもなく、外見(表情)的にも全く印象がない。 三遊亭テナルディエ、背が高くひょろっとしていて日本では今までいなかった海外の テナルディエのイメージにぴったり。歌はちょっと迫力なく、それなら芸達者な感じを 落語家らしく出してくれればキャラクター的に良いけどそれもあまり感じられず残念。 森テナルディエ夫人は言うことなし。ぴったり。今日のキャスト陣の中で一番良い。 ガブローシュ、意外と声が出ている。マイクの力か?弾袋も上に届いたし。 編曲がちょっとイマイチ。冒頭の獄中労働の曲も薄っぺらでちょっと早く、軽快なマーチ っぽい。 初日ということでカーテンコールも多い。小花が飛ぶのも久しぶりに見た。ちょっと感動。 カーテンコール、最後に出てくる今井バルジャン、ジャベールとハイタッチするのが恒例 だが、高嶋ジャベール、ちょっと突然でびっくりした様子。今井は今までやられる側 だったからこれがやりたかったんだろうなー。 幕間のロビーや観客席には元キャストをたくさん目撃。鹿賀、阿知波、藤田、入絵など。 パーティーでもあるのかな。2F最前列にはスタッフと思われる外人グループも。 新キャストも相当緊張しただろう。 [7月23日] 別所哲也も外見からしてみてもジャン・バルジャンのイメージぴったりで、ミュージカル 経験もあるし、注目株。東宝ではあまり見ないし、常連に比べてオーデションでも相当 注目を浴びたはずである。感想はビジュアル的には確かにいいが、歌まだまだ弱いなー。 歌い方(語り歌い方)が無理矢理前キャストを真似ているような気がしてならない。 アンジョルラスから昇進(?)の岡ジャベールであるが、さすがに声質はいいがやはり 年配のジャベールには若い、というか貫祿がまだ不足している。まだアンジョルラスと いった感じ。「スターズ」ももっとこの人なら声量が出ると思ったけど意外とアッサリ。 高橋ファンティーヌは今までの特徴ある歌い方(というか声)がかなり変化していていい 感じだがパワーが足りない。(裏声で声量が間に合わないのかも。) 岡田マリウスが今回の収穫。イメージピッタリ。ひ弱い美男子系の山本マリウスよりは がさつ系の男っぽさが感じられる方がいいのだ。マリウスの歌はそんな感じを与えてる のでそういう系の俳優が良い。逆に吉野アンジョルラスもどっちかというと中姓的な 美男子系の顔立ちなのでもっとがさつな方が良い。 [まとめ] 全体的に新生レ・ミゼラブルは、始まったばかりということもあり、以前より質がよく ない。というか慣れていない。若返りすぎて熟すまでにあと10年は必要だろうか。 さすが4人もキャストがいると慣れるのも時間がかかるし、向上のスピードも遅いだろう なー。観客はいろいろキャストが見れていいが、結局、東宝の常連がほとんどを占めて いるので東宝の他の作品でも見れるだろう。。。そちらで慣れて、、、という感じかな。 というか「レ・ミゼラブル」を東宝ミュージカル俳優への登竜門的作品にして欲しくない のであるが。。。昔のキャストがすでに懐かしい感じである。
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