PACIFIC OVERTURES

                                      STUDIO 54 (NEWYORK)


              9.DEC.2004  20:00〜  HH10  MID MEZZ   $34.25(Discount coupon)


 Reciter        B.D.WONG                  Manjiro      PAOLO MONTALBAN
 Kayama         MICHAEL K.LEE             Tamate       YOKO FUMOTO
 Lord Abe       SAB SHIMONO               Madam        FRANCIS JUE
 Noble          FRED ISOZAKI
 Shogun's  Mother, Old Man                                ALVIN Y.F.ING
 Observer, Officer, Warrior, British Admiral              EVAN D'ANGELES
 Officer, American Admiral, Sailor                        DARREN LEE
 Merchant,Third Councilor,Dutch Admiral                   ALAN MURAOKA
 Priest, Kanagawa Girl, French Admiral                    DANIEL JAY PARK
 Samurai, Thief, Soothsayer, Storyteller                  JOSEPH ANTHONY FORONDA
 Grandmother,Commodore Perry, Lord of South, Sailor       RICK EDINGER
 Second Councilor, Emperor, Priest                        MING LEE
 Observer, Shogun's Companion, Boy, Noble, Sailor         TELLY LEUNG
 Kanagawa Girl, Daughter                                  MAYUMI OMAGARI
 Shogun's Wife, Kanagawa Girl                             HAZEL ANNE RAYMUNDO
 Son, Shogun's Wife's Servant, Kanagawa Girl              YUKA TAKARA
 Fisherman, Physician, Older Swordsman, Russian Admiral, Samurai Bodyguard  SCOTT WATANABE
 
 日本人演出家初のブロードウェイということで何かと話題のこの作品。日本でも何回か日本人
 キャストで上演し、ニューヨークのリンカーンセンターでも同キャストで数回公演している。
 今回はキャストにブロードウェイの俳優をキャスティングしてブロードウェイの劇場での上演。
 それでも2カ月の限定期間の公演というのは本格進出というよりまだ試験的な感じがする。
 実際TKTSの様子や客席の埋まり具合を見てもかなり厳しい状況にある。2階席は半分しか
 埋まっておらず1階も後方は空いていたようである。

 作品自体は1976年に初演した作品のリバイバルでレッキとしたブロードウェイミュージカル
 である。作詞作曲STEPHEN SONDHEIM、脚本JHON WEIDMAN、演出は巨匠HAROLD PRINCEという超大物
 ぞろい。装置BORIS ARONSON、衣装FLORENCE KLOTZの方はあまり聞いたことないですが。
 確かに日本が題材の作品でこの顔ぶれというのはかなり違和感があっただろうが、今回は演出に
 宮本亜門、装置松井るみ、衣装コシノジュンコと日本人スタッフが入り、初演よりは違和感のない
 舞台のはずなのだと思う。
 ただしキャストは主要キャストが日本以外のアジア系に占められている今回が分が悪いみたい
 である。初演時はReciterにハリウッド映画でもおなじみの日本人俳優マコ・イワマツ、Kayamaに
 ISAO SATO、ManjiroにSAB SHIMONO(今回Lord Abe役で出演している)、Lord AbeにYUKI SHIMODAと
 少なくとも名前を見る限りでは日本人がやっている。ちなみにアメリカ提督Perry役までHARUKI 
 FUJIMOTOと日本人がやっていたみたいである。

 というわけで英語でしゃべっているのは置いておいて、やはり日本人の私としては見た目に厳しく
 なってしまうのである。侍の髪形ひとつをとってもやはりなぁ〜といった感じである。
 物語はReciter(語り部?)が説明をしながら話を進めていくわけであるが、一応このReciterが
 主役みたいな扱いである。歌もReciterが歌う曲が多いのであるが、B.D.WONGの声があまり出て
 いないように感じた。語り部なので威厳を含めた押さえた感じなのだろうか。曲自体もあまり、
 良い曲というより、ほんとに説明のようにすらすら流れていってしまう感じで印象が薄い。
 ストーリーは「黒船来航に驚く日本人たち」がテーマで、西洋文化に初めて触れて大慌ての様子が
 おもしろ可笑しく描かれていく。将軍の母が黒船対策に煮え切らない将軍を毒殺してしまったり、
 Lord Abe(老中阿部正弘のことか?)が将軍に出世したり、ちょっと史実では、ん?と思う展開で
 マジメに歴史ドラマと思わない方がいいようである。セリフもコントのように、西洋では当たり前
 的な事を勘違い的なボケ(といっても日本人は真剣)セリフで笑わせている箇所がいくつかある。
 私から見るとコント的な時代劇というとバカ殿様をはじめドリフのコントを思い出し、結局
 ドタバタ劇のようにも見えてしまう。
 見た目にもかなりコント的なデフォルメしている部分もあって、米国人の姿が天狗のような長い
 鼻や爆発したようなチリヂリ頭のカツラをかぶってたりして相当デフォルメされているが、
 イメージ的には「なまはげ」のようにも感じられる。ペリー提督に至っては、人が二人入って
 いるような巨人のかぶりもの(?)で、それこそむかーしテレビのコントで見たジャンボマックス
 (?)を思い出した。

 舞台は水がはってあって池のようなものに浮いている能舞台という感じで、なかなか風情があって
 良い。オーケストラが舞台両脇上部のボックス席に陣取っていて、そこが船の甲板のような装飾が
 してある。アメリカ人が登場する時は客席側から往来することもあり、観客は船に乗って来航した
 外国人といった視線で舞台を見ていくことになる。
 黒船が来航したシーンは客席の天井の後方より大きな星条旗がスルスルと客席に向かって開いて
 いくという結構おもしろい演出になっていた。
 ちなみにオーケストラには日本人はいないようである。それでも笛(リコーダー?)、三味線
 (キーボード?)をはじめ和的な音が出され、鼓、和太鼓は外国人の奏者が一生懸命叩いていた。
 冒頭は舞台上に和太鼓とそれを叩く裸ふんどしの男、といういかにもニッポンという感じを強調
 してるのもブロードウェイで観るとちょっと可笑しい。

 演出でもうひとつ面白いと思った部分は、幼少の天皇が紙の人形なのである。両脇にNoble
 (公家?)がいて操っている様子が、文楽のような操りっぽくて、まさに現実をうまく日本文化に
 投影してるといえる。ちなみにこの天皇はラスト近くに明治天皇として成長し開国に踏み切る、と
 いうシーンがあるが、大人(人間)の天皇役はReciterがやっている。また、前半では将軍役も
 このReciterである。観客に、一番偉いのは語り部のこの俺さ〜、といった感じでアピール
 しながら演じる構成になっているのは、いい感じである。
 ちょっと引いてしまったのは、アメリカ人たちが神奈川に上陸するかも、ということで遊廓の
 MadamがKanagawa Girlsを引き連れて歌い踊るコメディ曲「Welcome to Kanagawa」という曲が
 あるが「Kanagawa〜」と連呼していてNYで神奈川が有名になるのはいいのであるが、神奈川県民
 としては題材が題材なだけに複雑な気分。

 衣装は2幕に登場する諸外国の司令官の髪の色が緑とかオレンジとかだったり、かなりビジュアル
 的にカラフルな路線なのだろうか。和服にしてもサテン地なのか、結構テカテカしていてあまり
 和服っぽく見えない感じだった。照明の当て方がヘンなのか。

 ダンスシーンと思えるのはラストだけで、設定は現代ということになっていて、皆、黒服を着て
 いる。やはり和服での群舞が欲しいところ。ラストは、開国によって現在、日本はここまで来た、
 ということをアピールするシーンになっており、ソニーとか松井までネタに使われていた。

 ここは、CABARETをやっていた劇場で、1Fはレストランみたいなテーブル席になっているわけで
 あるが、この演目でも同じ構造であった。私は今回2階席であったが、1階はCABARETの時のように
 ウェイターが注文を取って飲み物を運んでいたようである。ちょっとこのスタイルはこの演目には
 合わず。いっそ、1階は畳の桟敷席にしてウェイターは幕の内弁当でも売ったらいいのでは?と
 思ってしまう。
 また、入り口付近のロビーには、能や将軍などの説明ボードがあり、開演前は人だかりもなかった
 が、終演後には客が輪を作って見入っていた。消化不良なのか、それともWest meets Eastの瞬間
 ってこういうことなのか。

 日本のことがテーマになっているのはうれしいが、どうも、作品的に弱い感じである。
 同じアジア系俳優総出演でチャイナタウンを舞台にしたRICHARD RODGERSとOSCAR HAMMERSTEINU
 のFLOWER DRUM SONGと比較しても厳しい状況である。
 日本の開港150周年が数年後に控えているので、そのあたりに日本(横浜など)でやれば良いの
 ではないだろうか。
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