DRACULA


                             BELASCO THEATRE (NEWYORK)


             10.DEC.2004  20:00〜  M113  ORCHC   $51.25(Discount Coupon)

  Dracula            TOM HEWITT             Mina Murray      MELISSA ERRICO
  Jonathan Harker    DARREN RITCHIE         Lucy Westenra    KELLI O'HARA
  Reinfeld           DON STEPHENSON         Arthur Holmwood  CHRIS HOCH
  Quincey Morris     BART SHATTO            Jack Seward      SHONN WILEY
  Abraham Van Helsing     STEPHEN McKINLEY HENDERSON
  First Vampire      JENIFER FOOTE          Second Vampire   ELIZABETH LOYACANO
  Third Vampire      MELISSA FAGAN          Child            MICHAEL SOLOWAY
  Ensemble      MEGAN REINKING,JENNIFER HUGHES,PAMELA JORDAN,GRAHAM ROWAT

 2002年くらいにNYの街中で看板を見て依頼、ようやく開幕してくれた。私的には相当
 待ち望んでいた作品である。なによりもJEKYLL&HYDEのFRANK WILDHORNの新作ということで
 余計に期待も高まるというもの。さらにMICHAEL CRAWFORDのDance of the Vampiresがコケて
 しまったので吸血鬼もの名誉挽回のエールも込めて期待したい。

 やはり吸血鬼ものは独特の世界を醸しだすのかホラーともギャグとも変形ロマンスともいろ
 いろ料理できそうで、おもしろい素材である。今回の「Dracula」はBram Stoker原作の小説
 に忠実にミュージカル化しているそうであるが原作をまともに読んだことがないのでどの
 程度原作どおりかはわからず。

 まず、期待のFRANK WILDHORNの曲だが、一幕ラストの曲がいい。「Life after life」という
 曲だがすぐに覚えられるメロディである。何回か繰り返され、カーテンコールやその後の客の
 退場時BGMにも効果的使用されていることから、製作側的にもこの作品のメインテーマなの
 だろう。他の曲に関しても総じて良いメロディはあるが、JEKYLL&HYDEとThe Scarret Pimpernel
 の曲によく似ているというか一人盗作のような感じがする。終わってみるとちょっと飽きた
 感じもする。
 JEKYLL&HYDEとThe Scarret Pimpernelはそれぞれ似たような曲もなかったのに、なんでここに
 来て似たのばっかり? と、FRANK WILDHORNのメロディ創作の泉が枯渇してしまったのでは?
 ととても残念に思う。
 
 さらに、この作品、アンサンブルが4人と少ない。つまり、今までのFRANK WILDHORN作品の
 良いところであった壮大かつ絶叫系のモブソングが活かされないのである。2幕にこれまた
 Scarret Pimpernelの「Into the Fire」に似たシーン(ドラキュラを倒すためにVan Helsing
 の一団が船に乗って出航していく)があって、歌もまた「Into the Fire」っぽいのであるが
 なにぶんにも人が少なく大合唱というにはちょっと迫力不足。

 このアンサンブル4人というのは女3人、男1人で、女の方は、Vampire役を日替わりで交代
 しているようである。舞台上でもVampireの影武者で、フライングしたり棺桶に消えたりする
 Vampireの身代わりをしているようである。言うまでもなく男のアンサンブルはDraculaの
 影武者。この作品、やたらとフライングが多くDraculaとVampireはシーンとシーンの間に
 意味もなくコウモリの如く舞台上を飛んで横切ったりするのである。あちらにいると思ったら
 こちらから、という効果演出に影武者も大活躍している。他にも床がスライドして歩かずに
 退場とか非人間的な動きを装置を駆使して表現している。二幕で立てた棺桶の中から前に浮き
 上がってくるというのもおもしろい。

 他にもおもしろい仕掛けがたくさんあってかなり工夫されていると思う。一幕の初めの方で
 いきなり、Jonathan Harkerの血を吸うDraculaであるが、最初の登場では相当の老人である
 Draculaが血を吸ったとたんに、白髪が黒髪に、爺さんの特殊メイクが取れてTOM HEWITTの
 素顔にと一瞬で変わるのは、美女と野獣のBeastも真っ青である。さらに吸血鬼と言えば血。
 血のりを口からしたたらせて歌うのは俳優としても見せ所なのかかなり気合の入ったシーン
 と見受けた。(一応、ハンカチを出してぬぐうのだが、そんなこと意味ないほどの量でこれが
 またコワい。)

 先の「Into the Fire」に似たシーンには波の表現を照明か影像で背景に投影しているが
 結構リアルに表現されていて印象に残った。また、その後の城に着いたシーンで、Draculaが
 退治にやってきた集団の一人Quincey Morrisを返り討ちにして刺し殺すシーンがあるが、
 いきなり背中から棒が突き抜け(横向きで脇から通してるのではなく、ちゃんと背中から
 生えている状態)なかなか殺し技表現も進歩している。JEKYLL&HYDEの場合、やはり敵5人を
 順次殺していく必殺仕事人みたいなシーンがあり、この作品についても、ちょうどそれ位の
 人数が退治に城にやってきたので「おいおいまたパクリかよ〜」と思っていたが、実際の
 ところは殺したのはこの一人だけで、このあとすぐDraculaが早々に死んで終わりという
 アッサリした展開。拍子抜けというか、このストーリーでは余計に悪い。

 他にもコンタクトレンズを使用していたりして、装置・小道具系は活躍しているが、一幕の
 巨大な「少年とガイコツ像」だけはなんのためにあるのかわからず。たしかにビジュアル的
 には目を引くけど。

 さて、主演のTOM HEWITTであるが、ちょっと期待薄であったのだが、終わってみると背も
 高くてイメージピッタリでなかなか良かった。ラストのカーテンコールで大階段から降りて
 くるところは文句無しにかっこいい。実はDracula役のSTANBYとしてBeauty and the Beast
 やJEKYLL&HYDEでも見たことがある"モンスター系"ならお任せのCHUCK WAGNERが
 キャスティングされていて、こちらも是非観たいなー、と思っていたが、かなりTOM HEWITT
 がハマリ役だったのでそんな思いはどこかに行ってしまった。
 ヒロインのMELISSA ERRICOもいい感じで熱演していたが、声や歌はLucy Westenra役の
 KELLI O'HARAの方がいいように思えた。
 あとドラキュラといえば今年映画にもなったVan Helsing。こちらはいかにも大学教授と
 いった感じのおじいさんで、Dracula役と対決する、という構図をストーリーの軸にする
 なら少し弱い感じである。DraculaとMinaとのロマンスを含め実際はどこに作品の重点軸が
 あったのかは不明なのだが。

 全体的にはかなり気に入った作品である。もう一度観たいと思わせる。がしかし、Dance of 
 the Vampiresも含め、私が気に入っても駄目みたいで、この作品は来年1月2日を持って
 閉幕が決定したそうである。キャスト盤CDすら出ないようで非常に残念。「Life after 
 life」いい曲なのになぁ。
 残念であるがFRANK WILDHORNには次回作に期待しよう。別にフランケンシュタインでも狼男
 でもいいけど。っていうかみんなまとめて、トニー賞俳優ヒュー・ジャックマンを主演に
 迎えてミュージカル「ヴァン・ヘルシング」というのはどうだろう?
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