TARZAN

                          RICHARD RODGERS THEATRE (NEWYORK)
  
                          (Preview , Opening 10.MAY.2006)


                      24.MAR.2006  20:00〜  S11  ORCH   $76.25

     Tarzan     JOSH STRICKLAND             Jane               JENN GAMBATESE
      Kala       MERLE DANDRIDGE             Kerchak            SHULER HENSLEY
      Terk       CHESTER GREGORY II          Professor Porter   TIM JEROME 
      Clayton    DONNIE KESHAWARZ            Young Tarzan       DANIEL MANCHE

ディズニーの新作である。しかも今日がプレビュー初日。チケットは売切れ状態。しかし、一週間ほど
前に抽選ラッシュがあると聞き、2時間半前に劇場前へ。すごい人の数だがまだ情報が知れ渡って
いないためかWickedほどは多くない。日本人も皆無だった。抽選結果はもちろん外れ。だって20席
って10人くらいしか当選しないってことじゃん。無理無理。で、そのあとすぐキャンセルラインへ。
6、7番目だったが最初の3人はすぐにチケットにありつけたが、その後は一向にお呼びがかからない。
開場時間を過ぎ開演まであと15分。
と、その時、一人の紳士がやってきて列に並ぶ人に声をかけだした。どうやら1枚はゲットしており、
もう1枚をゲットしたく奥さんとキャンセルラインの後ろに並んでいたらしいが無理そうなので帰る
らしい。ということで人助け。余って困っているチケットを私が引き取ってさしあげた。(もちろん
定価で。)こんな経験は初めてである。

で、劇場に入り開演。と思いきや何故かマイクを持った人が舞台に立ち話を始めた。今日来た人は
ラッキーとかそんな感じの話で指揮者とかステージマネージャーの名前を紹介していた。その人は話し
終わると客席に座る。そのあたりはスタッフ陣がいるようで作詞、作曲のPHIL COLLINSもいたらしい。
なんということか気付いた付近の客がサインを求めて次から次へと・・・。遠くの客は立って写真撮り
始めるし開演するどころかとんでもない状態に。セキュリティの係が注意するなどして収まってよう
やく開演した。

冒頭、透明幕に描かれた帆船のシルエット。効果音と揺れる幕で嵐の様子を表している。
突然船が消えると人が上から落ちてくる。これがスゴイ。客席から驚きの声と拍手。照明といい
スピードといい海に落ちたと一目でわかる演出なのだ。二人の人物(Tarzanの両親)は上へと這い
上がり明るくなると今度は砂浜の上に立っている。また拍手。この砂浜、客は上から見ている、
つまりは宙づりで舞台奥の壁に立っているのだ。そのまま宙づりで床に降りて舞台に立つとジャングル
が・・・。この冒頭の演出でド肝を抜かれてしまった。演出のBOB CROWLEYは元々装置家なのである。
今回が初演出となる。
この後のシーンも両親が建てた家がつり上がっていったり、ヒョウ(?)に襲われて・・・Kalaが
遺児を発見するまで装置を有効に使いスピーディに進行していく。そして、ゴリラ役のアンサンブル
軍団の登場。ロープにつかまり空中アクロバットを見せる。これも拍手だ〜。この空中アクロバット
(Aerial)のデザイナーとしてPICHON BALDINUがクレジットされている。殆どのアンサンブルは宙づり
やアクロバット要員になっており、床にいるより空中いる方が長いのではないかと思う。
ミュージカルのアンサンブルというとダンサーとかコーラスって感じだが、この作品ではサーカス団員
かスタントマンって感じで大変だと思う。
もちろんTarzanもバンバン空中に登場するし、人間であるJaneでさえも宙づりになったりする。
Janeの登場シーンは虫だらけ。もちろんアンサンブルが演じている。やはり宙づりで出てくる巨大な
蝶が目を引く。巨大なクモも出てくるがこちらは大き過ぎてタコに見えてしまうのだが。
とにかく飽きるほど宙づりを多用している舞台は開口が縦長な欧米型劇場ならばこそ活きるのだろう。
この演出が目的でこの劇場を借りたのだろうとも思える。そういえばこの劇場でやってた前の作品は
Movin' Outでこちらもやはり舞台の上にバンドを置き下で演じるという二階建て構造という縦長構造
を活用した作品だった。
宙づり多用は見てて余計な心配もしてしまう。事故でも起こらなければいいが。それに演出で宙づり
しなくても思うところもある。途中何度か出てくる黒ヒョウもアンサンブルが宙づりで演じている
わけであるがTarzanと戦う場面では動きが鈍くなってしまっている。簡単にいうとブランコみたいに
あっちに行ったら戻ってくるまでに時間がかかって戦闘アクションとしてはスピード感に欠ける。
また、通常なら群舞するナンバーでもアンサンブルはブラブラと吊り下がって雑技団のような曲芸に
終始してしまっており、装置の一部として扱われているように思えて人間の生身の肉体を使った演技
が恋しい。一曲くらいは床の上で何も道具持たず体一つで踊る群舞というのが欲しかった。 

アニメでは当然でもミュージカルではちょっと違和感があるシーンもある。冒頭に関して言えば曲は
Tarzanが歌っているが声だけというのは寂しい。やはり、オープニングは装置だけでなく歌やダンス
でインパクトが欲しい。そういう意味ではCircle of Lifeは偉大である。演出やストーリー上無理な
場合でもせめてオバーチュアを入れて欲しい。冒頭以外でも音楽の使い方などに疑問が残る。短いし
リプライズが多いし、絶唱系の曲があっても場面が悪い。これは演出というよりPHIL COLLINSの責任
なのか。曲に関して言えば"You'll Be In My Heart"はやはり名曲。でも1幕はKalaが歌うのはいい
として2幕のリプライズはTarzanとJaneの方が盛り上がった気がする。あとの曲は1回では印象に
残らないがメロディは悪くないと思うので何回が聴くと味が出てくるかもしれない。アンサンブルの
宙づりなどの雑技は太鼓のリズムのBGMだけのところがあるのもミュージカルとしては異質。
ジャングルの雰囲気にはいいだろうけど。Be Our GuestやMy Strongest Suitのような中盤のショウ
ストップ的なお祭りナンバーも欲しいし、ScarやGastonが歌ったような悪役が歌うワルカッコいい曲
も欲しい。

観る前から演出的に難しいだろうと思っていたのは、子役であるYoung Tarzanが大人役と入れ替わり
となるとやはりLion Kingに似てしまうのでは、ということである。1幕の後半、ロープにつか
まって歌いながら登場、しかも上半身裸。うーん、もっとひねって欲しかったなー。無理だろうか。
この入れ替わりのナンバーをメインで歌っているのはTerkで、Lion Kingで言えばTimonとPumbaaを
一人でやっているようなおちゃらけキャラである。LumiereとCogsworthというのもあるしやはり
こういうキャラはコンビで欲しい。このミュージカルではTerk一人でも人気が出ると思うが。
アニメではゾウのTantorがTerkの相棒的役割だったが、ゾウは難しかったのかカットされたようだ。
従って船に閉じ込められたTarzanをTerkとTantorが助けに行くというクライマックスも丸ごとカット
されている。そもそもTarzan捕まらないし。Claytonもそこまで悪役化しないし。
あと演出的に難しいのは言葉である。動物だけ、人間だけの世界ではなく、動物世界と人間世界を
一緒にしなければならない。動物(ゴリラ)だけの世界だった前半はゴリラ役も普通にしゃべって
歌っているが、Janeら人間が出てくるとゴリラやTarzanは突然セリフが「ウホッウホッ」になって
しまうのである。Janeがその場を去ったり顔を背けたりするとゴリラ同士また英語で会話しだす。
そのうちTazanはJaneに言葉を教わりたどたどしくカタコト英会話が始まっていくわけだが、Terkや
Kalaと話すときは、突然流暢な英語に・・・って、難しいですよねー。この作品は。

俳優はトニー賞受賞者とか有名人ではなくどちらかというと新風を吹き込む感じのキャスティング
である。しかし、TarzanはいいとしてKalaやJaneは超有名どころをもってきても良かったかも。
Professor PorterはJaneの父であるがBelleの父親役をやっていた人でJaneと歌う父娘のナンバーは
そのままBeauty and The BeastのBelleとMauriceである。
アンサンブルにRIKA OKAMOTOさんという日本人がいる。Movin' Outにも出ていて結構ダンスで目立
っていたが、今回はゴリラの一員として空中アクロバット。2幕冒頭では紙を破る重要(?)な役を
やっている。

カーテンコールはもちろんスタンディングになったが1回幕が降りると拍手は終わり。曲的に盛り
上がらなかったのか。カーテンコールも装置やアクロをバンバン取り入れたら大喝采になっただろう。
主役は装置なのだから。
落ち着いて考えるとミュージカルというよりディズニーランドのショー的な要素が大きい。
冒頭の難破船から水中のシーンは今度制作されるというリトルマーメイドを先取りした感じでやら
れた、という感じ。Janeの登場シーンの虫たちは企画はないだろうけどバグズライフ?という感じで
なかなか発想豊かな舞台効果ではある。

宙づりで上から人やセットがバンバン降りてくるので1階席の後方だと2階席が張り出しているため
上部が見切れる。具体的にいうと1階のO列かP列あたりが全体が観れる限界。もちろんセンター、
サイド側とか座高によって差はあるだろうけど。立見スペースもあるようで、そのうち一般に売り
出されるかもしれないが、プレビュー中は関係者が見ているようだった。
グッズも大いに売れていた。CDは予約のみで夏以降の販売になるらしい。このTarzanカラーの
代名詞とも言えるグリーンがいい感じの色で気に入った。Aidaのブルーも良かったし、LionKingは
黄色とディズニーは色使いがウマイですね。Tシャツももちろんこのグリーンなのだがもう一色
ワラ色(ラクダ色)みたいなベージュのもある。これは何なんだろう。グリーン以外ならやっぱ
スタンダードな黒が欲しい。 
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