Jekyll & Hyde
PLYMOUTH THEATRE (NEWYORK)
7.NOV.1999 15:00〜 S20 ORCHO $40.00(50%OFF+$2.50) Jekyll & Hyde ROBERT EVAN Lucy COLEEN SEXTON Emma Carew ANASTASIA BARZEE Jhon Utterson STUART MARLAND Sir Danvers Carew BARRIE INGHAM Simon Stride ROBERT JENSEN Lord Savage/The Spider MARTIN VAN TREUREN Lady Beaconsfield/Guinevere REBECCA SPENCER Archibald Proops BILL E.DIETRICH General Lord Glossop DOUGLAS LADNIER Rupert,Bishop of Basingstoke JOEL ROBERTSON Poole,Jekyll's manservent PETER JOHL A Old Man/Mr.Bisset DAVID CHANEY フィラデルフィアでツアー版(以下、PH)の装置家と演出家が違うことに驚き、  ブロードウェイ版(以下、BW)をどうしてももう一度観ておきたいと思い観る  ことにした。13時からのFootLooseの都合で遅刻は覚悟の上。チケットを当日  TKTSで買ったが席はなんと1階の最後列端っこという途中入場を見透か  されたような好都合の席だった。  入場するとちょうどJekyllとEmmaの婚約パーティーのシーン。やはり違う。  PHでは野外の庭みたいなところだったが、BWは室内である。舞台全般に渡り  しっかり黒と赤の立方形枠や前方の一段降りられる銀橋もどきが設置されている。  気になっていた野外のちょうちんはここにもあって後方の窓の外にぶら下がって  いた。このあたりはPHの装置を担当したJAMES NOONEがBWの方にも連名で  追加クレジットされているので彼の作品だろう。  よく観てみると装置だけでなく演出も登場人物も衣装も、さらに曲順はおろか  曲目まで違っていた。Lucyが登場するシーンは The Red Rat(Lucyが働く店の名)  のショーであるがその曲は別物でPHでは女性ダンサーとLucyがシルクハットと ステッキのスタイルから衣装を変えたりしてかなり長いショーを歌い踊るが、BW は男性ダンサーとLucyで退廃的なSMショーチックなシーンとなっている。 Jekyllがその後、家に帰り召使いのPooleと父の思い出話をしてから名曲 This is the moment に入るが、PHでは The Red Ratからの帰り道でUttersonと 父の思い出話をして、別れてから歌い出す。つまり、歌うのは帰り道の路上(?) で、これを観てからBWの室内での歌を観るとどうもせっかくの絶唱が家具のせい か閉鎖的な感じを受ける。  2幕冒頭でNewsBoyが殺人事件を伝え、ロンドンの庶民が恐れおののくシーンが  展開されるが、PHではNewsBoyは登場せず同じ民衆が恐れるといってもみんな  上流貴族の格好をしていた。つまり、殺されるのが上流の人ばかりなので、噂を  するのも上流階級の人達で次は自分の番かと恐れている状況がよくわかる。  この時のマーチングドリルのような動きがまた上品だったのでBWの庶民がバラ  バラにパワーで押して歌う動きとは対称的な感覚をさらに強くした。この歌の  最中にHYDEは4人の人間を次々と殺していくが、1幕のラストの1人も含めて  5人の殺し方もPHとBWで違っていておもしろい。PHでは主にナイフ派で  BWではステッキ派といったところか。総じてPHのHYDEの方が残忍。BWは  仕事人に徹している感じがする。これだけ自由に殺し技をアレンジできるなら、  もし日本でやる際には是非、三味線の糸か組紐などの投げ吊り系が欲しいところ  である。  今までの文章のニュアンスでもわかるかもしれませんが、比べてみると私はPH  の方が好みです。ジキルとハイドの物語という有名な題材を脚本に従って素直に  舞台化しているという点が大きいです。BWはちょっと芸術性が濃過ぎて言って  しまえばヘビーユーザー向けてすね。絵で言うとリアリティを追求する肖像画か  独自の感覚でアレンジするピカソの抽象画みたいなものです。  細かいつなぎもPHは自然です。JekyllとEmmaがいい雰囲気になっている時に  入ってきたEmma父のリアクションとか、The Red RatでJekyllとLucyを二人だけ になる時のUttersonの去り方などがごく自然に進みます。同じ店で飲み物を運ぶ  ウェイターは、ステージのLucyとテーブルのJekyllという離れた場所の二人の  動きに観客の目を合わせる効果的な使われ方をしています。注射器もBWでは  光らなかったので、ピンクに光るPHではその時の観客の視線が注射器に行くの  を狙っているのかもしれません。  さて、BW版の感想に話を戻して、キャストの方。初めて観るROBERT EVANの  Jekyll&HYDEであるが、声の伸びはいいものの声を大きくすると怒鳴っている  よに聞こえてしまうのが気になった。前半のJekyllのあたりは結構好青年ぽい  雰囲気がよく似合うので「このまま何も起こらないJekyll氏の診療日記」だった  らこれでもいいかもしれない。ただ、ラスト近くの一人二役の早変わりの  テクニックはさすがに長く演じているだけあってうまかったと思う。Lucyは  本来なら Luba Mason であるか今回は代役。でも拍手が一番多かった。ラストは  観客総スタンディング。この時、役者が拍手する方向でわかったがオーケストラ はどうも下手の2階ボックス席あたりにいたのだろうか。
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