Movin’Out

                         RICHARD RODGERS THEATRE (NEWYORK)

          21.MAY.2003  14:00〜   R7  ORCH   $53.00(50%+$3)

   Eddie     LAWRENCE RABSON        Brenda            LAURIE KANYOK
   Tony      CORBIN POPP            Judy              MABEL MODRONO
   James     BENJAMIN G. BOWMAN
   Sergeant O'Leary,Drill Sergeant     SCOTT WISE
   Piano,Lead Vocals                   WADE PRESTON
 
 MAMMA MIA!につづいてたくさんの既成歌手(グループ)の曲をつないだミュージカル
 が出来ているが、こちらはBilly Joelの曲をモチーフに作られている。しかし、見て
 みるとミュージカルと言っていいものか。俳優陣は全くしゃべらず、歌わず。
 歌はオケ(バンド)の Piano,Lead Vocalsにキャスティングされている人が全て
 ワンマンショー状態で歌うのだ。つまり俳優陣は演じて踊るだけ。振りはバレエが
 基本になっているようなので、どうやらミュージカルというよりバレエ、つまりは
 「ロック・オペラ」という言葉があるなら「ロック・バレエ」って感じだろうか。
 出演者にセリフがないので、ストーリーはダンスの表現だけでは追っていくのは
 難しいと予想されたためか、PlayBillにラストまでのストーリーが記載されている。
 メインキャストは5人だけで男3人女2人。冒頭のシーンでは男の2人は高校生(?)
 がクラブでお揃いで作ったようなジャンパーを着ているが、ごていねいに背中に
 大きく「Tonny」とか「James」とか名前が刺繍されており、これでセリフがなくても
 誰が誰かわかる仕組みになっている小技がすごい。ジャンパーを着ていないのが残り
 のEddie、PlayBillのストーリー記載どおりにEddieとケンカしているのがBrenda、
 Jamesと仲がいいのがJudyとわかる。

 ダンスだけで進行して行くもののバレエってやはりロック系の早いテンポは合わない
 かなー、という感じ。逆にゆっくりめのバラードには良く合う。JamesとJudyの踊る
 「Just the Way You Are」がとても良くて感動ものである。ゆっくりめの曲の1拍の
 うちにタメを作ったり、素早く1回転したりするのが芸術的だと思えるが、激しい曲
 だとそうはいかない。青春ものなので激しい怒りやエネルギーに溢れていたり、実際
 ドラッグに溺れてヘロヘロになっているシーンもあるが、そんな時のダンスは逆に
 きちんと回ったりジャンプ着地するよりも、勢い余って回転ブレしたり、
 ふらついたりしていた方がちょうどいいのかもしれない。バレエのように優雅で
 キチンとしているものとは求めるものが正反対なのかも。
 技術的にはとっても大変。早い曲はもちろん、衣装も動きにくそうなのもあるし、
 靴だってもちろん改造はしているだろうが、軍靴(半長靴)、ジョギングシューズ、
 ハイヒールなどあの振りをこなすには相当大変だと思う。
 ダンス(肉体)にたよる表現に執着しているのか、小道具の使用も最小限にしている
 ようである。アメフトのボールを蹴るシーンもマネだけだし、戦争シーンにおいても
 銃を構えているマネだけで銃は持っていない。

 出演者はPlayBillによるとアメリカの地方のバレエ団のプリシパルの人が多い。
 激しいダンスのためか、1日2公演ある水、土の昼はメインキャストは別の人たち
 がクレジットされており、今日がまさに水曜の昼なのだが今日はさらにJames以外の
 メイン四人が代役のチラシが入っていて相当大変なのだろうと思う。
 アンサブルで日本人がいる。5年くらい前に、スティーブン・スピルバーグ監督の
 新作映画「Memoirs of a Geisha(さゆり)」の主役にNY在住の無名の日本人が
 抜擢された、というニュースがあったが、その主役に抜擢されていたRIKA OKAMOTO
 という女性。残念ながら「A.I」「マイノリティ・リポート」の企画が先行して
 映画自体は未だに製作されていないが、逆に映画ができて大ヒットしていたら、
 この作品には出ていなかっただろうなー。顔を見るといかにも和服が似合いそうな
 純日本顔。冒頭のアメリカのハイスクール生徒の中にいると違和感があるものの、
 中盤のベトナム戦争(サイゴン)のシーンでは現地人として重要な役割をしている。
 小柄なためか他のダンスシーンにおいてもリフトされて振り回されてばかり、と
 目立ちまくっていて、ラストのフィナーレにおいてもアンサンブルの中で唯一人、
 ソロで礼をする機会が与えられているのがすごい。

 歌部分を担っているPiano,Lead Vocalsとそのバンドは、舞台奥の中央に吊られた
 ピットで演奏している。バンドメンバーも普通のミュージカルオーケストラメンバー
 と違って、有名歌手のバックバンドとしてコンサートとかで演奏している人たちで
 ある。もちろん、Billy Joelのツアーメンバーだった人もいる。一人のボーカルが
 ずっと歌うんならば、せっかくだから本物のBilly Joelに歌って欲しいと誰もが思う
 はず。超ロングラン公演して何千回とかの記念にでも1回限りでも実現しないかなー。
 Piano,Lead Vocals の人はピットの中央にドンとおいてあるグランドピアノを弾き
 ながら歌っていて目立っているが、よく見るとグランドピアノはハリボテっぽくて
 中身はシンセサイザーのようである。

 2幕構成であるが、休憩含めて2時間弱とかなり短め。1階最前列が1列全て空いて
 いるのはなんのためだろうか?(激しいダンスがやはり危険だから?)

 Contactがミュージカルというならこちらもミュージカルなんだろうが、歌に合った
 一括したストーリー展開とダンスの濃さから、私はこちらの方が好きである。
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